星組さんで、礼真琴さんが主演するアテルイのお稽古が始まっているみたいですね。
今回の原作、高橋克彦さんの『火怨 北の耀星アテルイ』は、2013年にNHKで映像化されています。DVDで見たので、感想を書きたいと思います。
主演は大沢たかおさんです。
アテルイと母礼(もれ)
このドラマは前編・後編に分かれているんですが、前編は、大沢たかおさん演じるアテルイと、北村一輝さんが演じる母礼(もれ)が、自分たちの里をヤマトの侵略から守るために、共に立ち上がる様子が描かれています。
母礼は、アテルイと出会った時点では蝦夷でありながら朝廷側に加わっているんですが、朝廷側の横暴を目の当たりにして、アテルイの仲間になります。
アテルイが里を思う気持ちや、率直な言動に周囲の人々が動かされていって、次第に大きなうねりになっていきます。
アテルイと母礼との間の揺るぎない友情がすごく伝わってくるので、私は最初、瀬央さんが演じるのは母礼なのかと思ったんですが、坂上田村麻呂なんですね。田村麻呂は、ドラマでは髙嶋政宏さんが演じています。
母礼は、宝塚では綾凰華さんが演じるんですよね。すごくいい役なんじゃないでしょうか。
坂上田村麻呂
坂上田村麻呂も、物語のキーとなる重要な人物です。
桓武天皇のもとで蝦夷征討に加わる朝廷側の人物なんですが、ものすごい策士というか、落ち着いた物腰なんだけど、実はすごい切れ者という感じで描かれています。頭の中で何を考えているのか、ちょっと怖いぐらいです。手段を選ばないようなところもあります。
蝦夷討伐をするにあたり、外から武力で攻撃するだけでなく、内側からも蝦夷の結束を崩しにかかったほうがいいと桓武天皇に進言するのは田村麻呂です。そしてそのために、アテルイの兄・阿万比古(あまひこ)を利用します。
アテルイと兄の阿万比古は、いろいろな経緯があって、蝦夷側と朝廷側とで全く違う立場に立つことになってしまうのですが、敵対していても、お互いを大切に思う気持ちは残っています。後半は、この兄弟のやりとりが、とてもせつないです。ちなみに阿万比古は石黒賢さんが演じています。でも、宝塚版では阿万比古は出てこないみたいですね。。。
一方で、アテルイと母礼を、殺さずに生かしておくように桓武天皇に進言するのも田村麻呂です。二人の姿に心を動かされたようでもあり、二人を蝦夷平定に利用しようとするようでもあります。田村麻呂は、演じがいのありそうな役です。瀬央さんの演技が楽しみです。
佳那(かな)
アテルイの妻となる佳那(かな)は、ドラマでは内田有紀さんが演じています。
元々は馬飼いの一族の下女なんですが、後にアテルイの妻になって、子どもに恵まれます。
ドラマでは、二人が惹かれ合うみたいなところはほとんど描かれていないので(アテルイはヤマトとの戦いで忙しい)、二人が結婚するところは結構唐突な感じです。「あれ、いつの間に両思いに??」みたいな。
有沙瞳さんが演じる「佳奈」は、字も違うし、母礼の妹っていう設定みたいなので、ドラマとはちょっと違うのかもしれないですね。
ドラマの中で、アテルイのことを密かに慕い、戦場でも行動を共にして、里を守るために命を捧げた女性として描かれているのは、妻の佳那ではなくて、古天奈(こてな)という蝦夷の族長の娘です。
父から男として育てられた男勝りの女性なんですが、アテルイのことを本当は思っていて、アテルイと佳那が結婚すると静かに身を引き、それでも同じ志を持つ者としてアテルイの理解者であり続ける姿が印象的でした。
今回の宝塚では、古天奈の役はないみたいですね。
こうしてみると、宝塚版はドラマとはだいぶ違うのかもしれないですね。
麻実れいさん
あと、アテルイたちが里の人々を安全な場所へ逃すため協力を求める、津軽の女族長の役で、麻実れいさんが出演しています。『もののけ姫』のエボシを思い起こさせるような感じなんですが、とてもかっこいいです。
感想
このお話は壮大で、内容も硬派だし、男くさい話なので、演じる生徒さんは大変なんじゃないかな、と思います。
私は蝦夷についてあまりわかっていなかったこともあって、映像から入ってしまいましたが、原作の小説を読んだら、また違った味わいなのかもしれないですね。
礼さん、有沙さん、瀬央さんと実力派ぞろいなので、宝塚版も楽しみにしたいと思います。
ぶっちゃけた感想
と、ここまで一応真面目に感想を書きましたが、ぶっちゃけていうと、このお話は蝦夷についてもいろいろ考えさせられるし、結末もハッピーエンドではないので、見終わった後、すごく神妙な気持ちになります。
自分が疲れている状態とかで見ると、なんともいえない気持ちになり、そこから自分の気持ちを浮上させるのに、ちょっと時間がかかってしまいました(←私の場合は)。
宝塚版では、このDVD版で主要な役柄だったアテルイの兄が、配役のところに出てきません。
私はDVDのアテルイと兄とのシーンで泣いたんですが、おそらくそういったシーンは宝塚版ではないでしょう。
また、田村麻呂が、アテルイの兄を利用して蝦夷を討伐しようとするところで、田村麻呂の人物像も浮き彫りになるんですが、それもたぶんないんだろうなー。
これは、演出の先生の腕の見せどころなんじゃないかと思います。
兄を出さない分、アテルイと田村麻呂や、佳奈との関係にスポットを当てるってことなのかな。
私が思うのは、アテルイと兄との関係に代わるような、別の感動ポイントがしっかり描かれないと、見ているほうは初めから終わりまで、ひたすら神妙な気持ちで終わるストーリーになっちゃうんじゃないか、ということです。
どうなるかわからないですけど、せっかく役者がそろっているんだから、演出の先生にがんばってほしいと思いますね~(エラそうにすみません)。
ただ、作品の内容がどうであれ、礼さんのすんばらしい歌と、熱演は期待できそうですね!!