宝塚テラス 

ゆるーく宝塚ファンを続けています 

北翔海莉さんのこと

 

 スカイステージの番組で、北翔さんのことを久々に見て、とっても懐かしかったので、北翔さんのことを書こうと思います。

 北翔さんは、私が唯一、手紙を書いたことのあるスターさんです。熱烈なファンだったわけでもないし、ファンクラブやお茶会に参加したこともありません。

 でも、宙組から専科に移動になったときの衝撃と、そこからまたトップスターに返り咲いたときの驚きは大きくて、手紙を書いたんですよねー。北翔さんの舞台や人柄が好きでした。

 ジェットコースターみたいな、宝塚人生だったんじゃないでしょうか。専科に移動したときは、もうこれで退団してしまうかもと思ったときもあったので、よく残って、トップスターになってくれたなと思います。

 

幸せな記憶 月組時代

 月組時代の北翔さんは、順風満帆だったように思います。

 大和悠河さんが新人公演主演を繰り返していた時代が終わって、北翔さんがトップスターの紫吹淳さんのもとで、立て続けに新人公演で主演しましたよね。舞台のクオリティーは、そのときからとても高かったと思います。

 服装とかについては、当時から紫吹さんにツッコまれていました。たしか、楽屋入りするときのリュックは止めたほうがいい、みたいな話だったと思う(笑)。でも、両肩のバランスとかを自分で考えて、リュックを選んでいるんだって、言っていたような記憶があります。結構頑固なのかな~、と思いました。

 当時から、歌も朗々として、新人じゃないみたいな安定感がありました。

 本公演でも、『暁のローマ』で霧矢さんとの掛け合いがあったりして、スターとして着実に月組で育っている感じがあったと思います。のびのびしていて、いい時代でした。

 

波瀾万丈 宙組時代

 宙組に組替えになって、大和悠河さんのもとで、大和さん、蘭寿さんに次ぐ、3番手のスターみたいな扱いだったと思います。

 最初の『バレンシアの熱い花』のときは、蘭寿さんとの役代わり公演でした。このとき、蘭寿さんと北翔さんは、学年の差はあるけれど、実力とかスター性は、ほぼ互角というか、横並びとして扱われていたように思います。少なくともこのときは、北翔さんが将来専科に行くなんて想像もできなかった。

 役代わり公演は、劇団が蘭寿さんと北翔さんを競わせて、力量を試しているみたいな感じでした。ダンスは蘭寿さんが素晴らしかったけど、歌は北翔さんだったと思う。ただこのあと、芸達者ぶりを発揮するたびに、幸か不幸か、路線男役だったらやらないような、いろんな役をやるようになるんですよね。

 一方で、蘭寿さんは、二枚目の路線から外れなかった気がする。

 蘭寿さんと北翔さんの方向性が、決定的に違ってしまったと感じたのは、個人的には『カサブランカ』でルノー大尉を演じたときだったような気がします。

 このとき蘭寿さんは、反ナチス運動の指導者としてカッコイイ役だったけど、北翔さんは中年太りのお腹の出たおっさん、ルノー大尉を演じて、それがまたうまかったんですよね。。。

 何かで、小池先生は、ルノー大尉を専科の人にするかどうか、迷ったって書いていた気がします。専科の方がやってもおかしくないような役でした。

 でも、ストーリー上はすごく重要なキーパーソンで、ルックス以外はおいしい役だったと思う。小池先生は後に、ルノー大尉を専科の人じゃなく、北翔さんにやってもらってよかったって書いていたと思うんですけど、私からすると、あのときルノー大尉をうまく演じてしまったことが災いして、専科移動へのカウントダウンが始まってしまった気がする。

 そうこうしているうちに、蘭寿さんのほうが、スター街道の真ん中を走っている感じになり、差が開いたような感じがしていました。蘭寿さんが組替えすると、今度は下級生の凰稀かなめさんがやってきました。

 凰稀かなめさんは、北翔さんの個性とは正反対ともいえる、洗練されたクールな美貌を持つ男役っていう感じで、悔しいけどやっぱりかっこよかった。この洗練された雰囲気は、北翔さんにはないものだったんですよね。洗練というところに関しては、勝負あったという感じでした。

 宙組に組替えになったころから、大空さんがトップになったころまで、北翔さんの立ち位置は、あまり変わらなかった気がする。常に二番手の下、みたいな。役の幅は広がっただろうし、何をやってもうまいんだけど、上級生だった蘭寿さんの下にいたときと違って、下級生の凰稀さんの下になったという感じは否めず、ついに路線から外れてしまったのかなと思いました。

 

寝耳に水な専科時代

 路線から外れたかもしれないと思うことと、専科に行くってことは、全く別物です。

 専科に行くって聞いたときは、正直いってぶっ飛びました。

 このまま北翔さんは辞めちゃうんじゃないかと思ったぐらいです。

 でもここで、専科に行った北翔さんを起用しまくり、各組の大作で二番手どころを演じられるように押し上げてくれたのが、小池先生だったと思います。ときには、それ無理があるんじゃないの、と思うようなスケジュールのときにも、小池先生は北翔さんを起用し続けていました。

 ルノー大尉でおっさんを演じさせたのも小池先生だったけど、専科に行った北翔さんに、第一線で活躍する機会を与え続けてくれたのも小池先生でした。どこかの組で正二番手のような立場になったことがなかった北翔さんが、いろんな組で実力を発揮して、トップへの突破口を手に入れるきっかけを与えてくれたのは、小池先生だった気がします。

 私から見ると、北翔さんの長い宝塚生活の中で、大きな転機のときには、いつも小池先生がいたように思います。

 

トップスターになるまで

 小池先生は、北翔さんの退団に向けた「歌劇」のコメントの中で、北翔さんが月組で、学年的に『エリザベート』の新人公演の主演ができなかったことが、その後の彼女の宝塚人生に大きく影響してしまったんじゃないか、というようなことを書いていましたよね。

 もし北翔さんが、新人公演でトートを演じて、その実力を発揮する機会を得ていたら、確かにその後の展開は違っていたのかもしれない。今さら言ってもしょうがないんだけど、浅田真央ちゃんが、トリノオリンピックに年齢制限で出られなかったこととかも、そうですよね。

 でも、あり得ないほどの遠回りをして、北翔さんはトップスターとして返り咲いてくれました。その間の北翔さんの気持ちは、私には想像もできないです。すごいメンタルなんだろうな。。。厳しい状況のときでも、誰よりもみんなを楽しませるエンターテイナーであり続けていました。そこが、北翔さんのすごいところだと思います。

 星組さんの、紅さんのファンからしたら、突然紅さんの目の前に北翔さんがやってきてトップになって、気に食わないと思う人も当然いたと思います。それは、普通の感情だと思う。

 紅さんも大変だった。北翔さんも大変だった。みんな、劇団の方針に翻弄された感じがします。このときの、紅さんのメンタルもすごかったと思います。

 北翔さんも、紅さんも、劇団から与えられた状況の中で、必死に頑張ってトップを掴んだんだから、好みの問題とか好き嫌いはともかくとして、どちらもやっぱりすごいんだと思う。

 北翔さんの宝塚人生は、見ているファンにとっても、ちょっと疲れるくらいにドラマがありました。ファンに対しては、いつも朗らかな方でしたよね。人柄も芸も、みんなから愛されていたと思います。記憶に残るスターさんでした。

 

追記(6月25日) 凰稀かなめさんの期を私が勘違いして記載していたので、訂正しました。大変失礼しました。やきもきさせてしまった方、ごめんなさい。